2013年7月22日月曜日

連関図の効用

 経営問題というものは一般に、さまざまな要因が複雑に絡み合って生じているものと思われ、また個々の問題も互いに密接なつながりを持っていそうです。

 このように複雑な要因が絡むテーマに関し、そこに関わっている要因にはどんなものがあり、またそれらは相互にどのような関係に立っているのかを整理し、明らかにする手法に「連関図法」があります。

 連関図法は、原因→結果,手段→目的といった一定のルールに従って各要因を矢印でつないでいって、要因相互の関係を可視化するものといえ、「新QC7つ道具」のひとつに数えられています。

 最大のメリットは、①要因相互の関係をひとつひとつ吟味することを通じ、論理の飛躍や要因要素の見逃しといったミスが防げる、②複雑に絡み合った要因相互の関係を可視化できる、という二点にありましょう。

 下の図表は、この連関図法を適用して、わが国の水産物のサプライチェーンをめぐる問題構造の図式化を試みたもので、各要因はすべて原因→結果の矢印で関連付けられています。

 連関図法と見た目が似たアプローチに「マインドマップ」があります。「マインドマップは、キーワードの集積ではなく、絵である」とか「マインドマップは、クリティカル・シンキングのアンチテーゼである」などと言われる通り、マインドマップは、連関図のような論理チャートではなく、より直感を重視する点に特徴がある(そしてそのメリットはスピードにある)というのが私の理解です。

 ところで、老若男女を問わず、新たな知識を仕入れたり、チャートやフォーマットで情報を整理することに熱心な人はたいへん多く、頭が下がります。しかしながら、そのチャートが「考えるためのツール」であり、「ツールをどう用いて、何を明らかにするのか」の吟味が重要であることは意外に没却されているように感じられます。

 例を挙げれば、「知的資産経営」を進めるにあたっての重要管理点はまず、固有の知的資産の発見と意味付けにあるはずです。しかしながら、それをいかに見出すかの方法論やプロセスの如何が具体的に論じられることはほとんどありません。知的資産経営報告書をまとめ、開示することの意義が短絡に強調される風潮には、違和感を禁じえません。

 アプローチの仕方に対する関心の薄さは、中小企業支援の現場にもしばしば見られます。
 何のアイデア出しをして、その結果を概観して整理・吟味し、どう収斂させるかのすじみちがあらかじめ予定されていないために、作業が迷走し、結局何だかわからなくなったり、いきなり最終解答のアイデア出しをしようとして、結局ありきたりなアイデアしか出なかったり、といった事態は、その場にいなくともアイデアシートを見れば一目瞭然です。
 最終着地点がどこかはアイデア次第としても、「検討の進め方」の指針なしのグループワークは、単なる雑談にならざるを得ません。「検討の進め方」を体得するには、まず「型を学ぶ」態度から「過程を学ぶ」姿勢への転換が不可欠でしょう。

 スポーツでも受験勉強でも同じだと思いますが、目あたらしい手法に飛びつくより、すでに確立された基礎的方法論について地道に訓練を積むほうが、結局は近道だと思います。
 とりわけ、連関図や特性要因図(例のサカナのホネみたいなやつです)は、サービス業の生産性向上運動など、現場改善を進めるうえで不可欠の武器となるものですから、今後中小企業支援の現場で、活用気運が高まることが期待されます。




 

 

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