2014年4月23日水曜日

ケース・ディスカッションに関するノート(2)

 前回は、自作の事例教材『株式会社甲物産』を用いて私がケースリーダーを務めたディスカッションについて書きました。

 今回は、私が作成した前出の事例教材を採り上げ、また違った方向から光を当ててくださった日本文理大学の橋本堅次郎教授の「けんしん大学」3月講座におけるケースリードについて書きます。

 私自身は、ケースリードに当たって、いま事例企業の中で起こっていることの全体構造を明らかにすることを重視しました。それを通じて、なぜ大きな認識のズレやディスコミュニケーションが起こるのか、という問題に接近しようとしたわけです。

 しかし今回、橋本先生は、これとはまったく異なるアプローチを採用されました。ケースに登場する人物のうち、下級職員のBさんに焦点を当て、「彼はどのような人物か」「彼にはどのような能力開発が必要か」「彼はどうすべきだったか」と受講者に問いかけたのです。

 この点、まだ橋本先生には直接お伺いしていないのですが、かかるアプローチをとられた理由は、講演テーマや先生ご自身の専門分野との関わりだけではなかったものと推察します。
 多くの受講者に近い立場にあるBさんの視点に立ったことで、受講者のハードルが下がったであろうことは想像に難くありません。
 
 ケース研究の効用のひとつに「自分とは全く異なる立場で考えることを可能にする」点があることは確かですが、上記のようなアプローチがあり得るということは、私にとって大きな気付きになりました。

 今回、ケースリーダーの立場を離れ、一受講者として講座に参加して改めて感じたことは、受講者が「Bさんという人物について論じているようでいて、結局は発言者自身の仕事観や業務経験の幅や深さを告白しているも同様である」ということです。ケース・ディスカッションの意義と魅力が、そこに大いに現れていると感じた講義でした。




 

 

 

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